我が白鯨はファラフェルなり MOROCCAN COOKBOOK NIGHT AND DAY
ファラフェル、という料理をご存知だろうか。
モロッコ料理の本 MOROCCAN COOKBOOK~NIGTH AND DAY~ (momo book)
- 作者: 寺田なほ/エットハミ・ムライ・アメド
- 出版社/メーカー: マイルスタッフ(インプレス)
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
縦書きへのこだわりと献立フレームワーク、そしてマスカルポーネ 「家めしこそ、最高のごちそうである。」
必要なのは技術ではなく”捨てない”勇気
「捨てない」からといって、所謂食費節約レシピ本ではない。
そして決して簡単料理ではない。
普段使わない事が多い野菜の皮や根、例えば三つ葉やせりの根。
それらを捨てないだけでは無く、きちんとした手間と食材を使って堂々たる一品に仕立てるのだ。これは意外と覚悟が要る。
まず、「食卓に出す覚悟」。普段はまな板で切り落としてポイとしてているものを、きちんと取り置きして調理する。そしておかずの一つとして供するのだ。
我が家では蕪の葉の炒め物は定番だが、枝豆や空豆の莢を調理し直した事は無い。
これは主婦の賭けだ。美味しければ一発逆転ホームランだが、外れれば「廃品を苦し紛れにおかずにした」ということになってしまう。
巷で廃棄食品の転売が騒がれたが、食卓で廃棄食品の再利用疑惑が持たれてしまう。
もう一つは「買う勇気」だ。葉が付いた人参や、三枚卸しになっていない魚を丸まる買い、使い切る覚悟を持って挑む必要がある。
…と若干敷居の高そうな感想ばかり並べてしまったが、「お、コレすぐ真似しよう」
と思うどストライクレシピもある。例えばおせちの残り物、栗きんとんのマフィンや数の子の浸け汁を再利用した煮物。ピクルスの漬け汁の再利用もすぐに試したくなった。
いずれにせよ様々な食材が「残る」ような状態になるということは、そもそも全うな食材を沢山使って料理をするという大前提があるのだ。
この本がどこか高潔で、不思議と凄く高級レシピに見えるのは本に載っていない豊かな食生活が行間に垣間見えるからだ。
例えばハーブの残り物でパスタソースを作る=沢山のハーブが家にあったということだ。生クリームで簡単アイスを作るということは、生クリームが残るような別の料理を作ったのだ。
そもそも残らないから作れない…などと言ったら元も子もないのだが。
枝豆の莢を揚げるのは勇気が要る度 ★★★★★
高野豆腐のパンケーキはすぐパクりたい度 ★★★
侮れないカタクリ粉、140字レシピ感とまさかの巨匠〜おばあちゃんのおやつ
手元の古びた本の奥付に「昭和61年」という表記があり愕然。
小学生の頃「かわりくずもち」を母と作った記憶があるが、まさか30年目とは…この本は未だに我が家の現役選手なのだ。
「かわりくずもち」が鍋で一瞬で変容する様に、"カタクリ粉って不思議"
と驚いたこともしっかり覚えている。
登場するレシピはいわば郷土食や伝統レシピ、中でも簡単に作れるおやつ/軽食に絞られている。食材も冷やご飯や芋、黒砂糖や重曹など漢字表記が似合うものが多い。
だがなかなかどうして「おや」と思わせるような不思議な食材の組み合わせだったり、意外な調理手順のメニューが多く、今読んでも面白い。
主婦になってから改めて読むと、極めてプラクティカルなレシピが厳選されている事に気付く。シンプルだが味が良く、子供から大人まで楽しみながら小腹を満たせる素敵な料理が多いのだ。餅や米、醤油や味噌など日本人の味覚ストライクゾーンがっつり押さえているので、深夜や空腹時に読むと危険だ。
【特徴】①レシピ本なのに写真が一切無い②基本的に一つのレシピは見開き2頁
小さな挿絵のみで調理手順の図解も一切無い。原稿用紙を思わせる縦書き線と読みやすい明朝風の字体。分量も漢数字で表記している徹底ぶり。
最近の料理写真どアップ系カタカナ満載レシピ本とは全く逆の路線だ。
和風系の伝統的な料理を扱ったレシピ本はどうしても野暮ったい感じがしたり、
調理手順をひたすら辿っただけの実用一辺倒のものが多い。
だがこの本は単なる実用書ではなくレシピを「読む楽しみ」を追求したエッセイ集のようなものだ。
縦書き文字だけの調理手順を読んでいるだけなのに、「黒砂糖」「カタクリ粉」と言った字面にほっこりとした安心さえ感じる。
この文字レシピを読む独特の快感は何かに似ている、と思ったら
Twitterの140字レシピだった。
表紙の絵や字体等、改めてデザインの独自性に感心しながらもう一度奥付を見て
「装填 安野光雅」…30年目にして気が付いたΣ(゚Д゚;)。
巨匠長い間気付かなくて本当にすみませんでした度:★★★★★
明朝レシピいいね!度 :★★★★☆
醤油餅系レシピが飯テロ並み度 :★★★★★
食べ物は時として、残酷な程真実を語る〜食べるたびに、哀しくって…
- 作者: 林真理子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1987/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
きのうも食べた、アボガドサラダ〜きのう何食べた?
最近我が家の食卓でもっぱらお世話になっているのはこちら。
手羽中の酢煮なんか、もう週ベースで登場する超定番となりました。
簡単ローストビーフもやったし、最新刊でケンジが作るデリ風アボカドサラダなんて
昨日も作りましたよ…。ささみわさび醤油もやった。
特徴として野菜レシピ&チープな食材を使った普段おかずに使えるレシピが多い。
しかも調理時間や洗い物を少なめにする手順等、普通の料理本よりも行き届いたこのTIPS。そして「どんな工夫をすると1レベル旨くなるか」という事を普通の台所で
目指し続ける主人公シロさん。つまり食べてくれる人=ケンジへの思いが言葉ではなく
食卓で表現されている。本当に本当にさりげなく。わざとらしくない、大人の愛情。
台所を預かるもの、忘れてはいけない原点ですね…お正月はシフォンケーキ真似します。
それにしても毎回、一回の食事当りのおかずの点数が多い…
ここだけは未だに真似出来ないので★一つ減点。本当にスミマセン(汗)
レシピ早速真似して作りました度:★★★★☆
地味なのに愛情たっぷり食卓度:★★★★★
食べる事と生きる事〜森瑶子の料理手帖
40歳を迎えて初めてのお正月、とにかく「毎日好きな事を発信しよう」と決めた。
どんなに仕事や育児や家事忙しくても、毎晩自分が読んでいる物…「食」に関わる本やマンガ、TV番組だと気付いた。
ブログの一発目にまず思いだしたのは彼女、森瑶子。37歳で初めての小説を書き、その後ものすごい数の小説を書き、三人の娘を育て52歳でこの世を去った彼女。ワーキングマザーという言葉が流行するずっと前の事。
彼女の小説やエッセイを読んでいると「女」「母」「小説家」という役割の狭間でキリキリと悩みながら生きている彼女の思い、それでもそれぞれの役割で美しく誇り高くあろうとする彼女のなりのハンサムな矜持が貫かれている。
食べ物にもその「矜持」と「自分の価値観と合致するものだけを選び取る」
という不思議な合理主義が共存している。
最初に読んだのは中学生頃の頃だけど、今自分が家庭を持つようになってから改めて読読み返してみると共感する事が増えていることに気付く。
というよりも思春期〜成人、就職、結婚というライフステージを経る間ずっと
「彼女のようになりたい」という憧れから自分の価値感が醸成されていたのかもしれない。彼女がこの世を去ったのは52歳。私の年齢プラス12年後だ。
私は後12年で何を残せるだろう…と思いながら、この正月は必ず久しぶりにサーディン缶を買って「ヨロン丼」を食べるぞ!と決意した元旦。
ハンサムウーマン度:★★★★☆
すぐ食べたい度:★★☆☆☆