食本ブログ ~No food No Life, No Book No Life~

「美味しい」本を捜す旅。「食「読みように食べ、食べるように読む]

侮れないカタクリ粉、140字レシピ感とまさかの巨匠〜おばあちゃんのおやつ

手元の古びた本の奥付に「昭和61年」という表記があり愕然。

小学生の頃「かわりくずもち」を母と作った記憶があるが、まさか30年目とは…この本は未だに我が家の現役選手なのだ。

「かわりくずもち」が鍋で一瞬で変容する様に、"カタクリ粉って不思議"

と驚いたこともしっかり覚えている。

登場するレシピはいわば郷土食や伝統レシピ、中でも簡単に作れるおやつ/軽食に絞られている。食材も冷やご飯や芋、黒砂糖や重曹など漢字表記が似合うものが多い。

だがなかなかどうして「おや」と思わせるような不思議な食材の組み合わせだったり、意外な調理手順のメニューが多く、今読んでも面白い。

主婦になってから改めて読むと、極めてプラクティカルなレシピが厳選されている事に気付く。シンプルだが味が良く、子供から大人まで楽しみながら小腹を満たせる素敵な料理が多いのだ。餅や米、醤油や味噌など日本人の味覚ストライクゾーンがっつり押さえているので、深夜や空腹時に読むと危険だ。

【特徴】①レシピ本なのに写真が一切無い②基本的に一つのレシピは見開き2頁

小さな挿絵のみで調理手順の図解も一切無い。原稿用紙を思わせる縦書き線と読みやすい明朝風の字体。分量も漢数字で表記している徹底ぶり。

最近の料理写真どアップ系カタカナ満載レシピ本とは全く逆の路線だ。

和風系の伝統的な料理を扱ったレシピ本はどうしても野暮ったい感じがしたり、

調理手順をひたすら辿っただけの実用一辺倒のものが多い。

だがこの本は単なる実用書ではなくレシピを「読む楽しみ」を追求したエッセイ集のようなものだ。

縦書き文字だけの調理手順を読んでいるだけなのに、「黒砂糖」「カタクリ粉」と言った字面にほっこりとした安心さえ感じる。

この文字レシピを読む独特の快感は何かに似ている、と思ったら

Twitterの140字レシピだった。

表紙の絵や字体等、改めてデザインの独自性に感心しながらもう一度奥付を見て

「装填 安野光雅」…30年目にして気が付いたΣ(゚Д゚;)。

 

巨匠長い間気付かなくて本当にすみませんでした度:★★★★★

明朝レシピいいね!度             :★★★★☆

醤油餅系レシピが飯テロ並み度                          :★★★★★

 

おばあちゃんのおやつ

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